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氷華血鎖【鳴門】

第21章 一部・休息


すると大人達はしら~っと視線を泳がせ代わりにトシが仕返しと言わんばかりに俺にヘッドロックをかけながら言う。



「姉上とマツなら隣だよ」

「隣!?!」



思わず叫び出しそうになる口を慌てて塞ぎながら柵を見上げる。この柵一枚を隔てた先に生まれたまま姿のチヅが………はっ!いかんいかん!ここにはお袋と一緒に来てるんだ。変な事したら真っ先にお袋に殺される。



-きゃっきゃ-



一同「!」





※※※





-かぽーん…-



「まさかチヅルちゃんも秘湯に来てるなんて!奇遇だねぇ」

『そうですね』

「マツちゃんも嬉しそうだ」

「えへへー」



偶然会ったミツさんのお母上がマツの頭を撫でる。



「しかしまぁ…随分と悩ましい女性になったもんだ」

『そう…ですか?』

「二年前はこう…中身は大人なんだけど子供って言うか…まな板と言うか…寧ろ洗濯板って言うか…」



洗濯板って…そんなに貧相だったのかしら。でもまぁ最近、変わったとか成長したとかよく言われる。言われるけど自分じゃ自分の事はよく分からない。



「良い人でも出来たのかい?」

『いえ、それは有りません』

「ははっ!確かにチヅルちゃんはそーゆーの興味無さそうだ」



豪快に笑うおばさんとは対照的にマツは不満そうに眉間に皺を寄せる。



「お前さんはまだまだこれからだが女の賞味期限は短い。良い人が居たら迷わず行くべきだ」



良い人、ね。そんなの…必要、無い…。





※※※





「姉上達…何話してるんだろう?」



少し寂しそうに柵を見上げるトシ。声は聞こえるが会話までは流石に聞き取れないが笑い声が聞こえてくるあたり楽しそうな会話はしているのだろう。



「そー言えばさ。イタチや鬼鮫のあんちゃんはチヅが何してるか知ってる?」

「「?」」

「いや…知らないなら良いんださ…」



何か気になってる事があるのかミツは風で飛んできて水面を泳ぐ木の葉を静かに見詰める。



「ミツ兄考え事?」

「トシも知らないもんな、チヅが何してるか」

「探し物してるってくらいしか」



その探し物は先程戦闘した腹違いの兄弟だと言う事は分かってる。奇しくも逃げられはしたが相当なダメージは与えたハズだから暫くは動けまい。
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