第21章 一部・休息
大袈裟に胸を張ってみせると何かを思い出した様に小さく声を上げ、持ち前の武器を発揮する様にピッタリとチヅルに寄り添って甘えた声色を発する。
「ねぇ姉様」
『どした?』
「今日は一緒にお風呂入ろ」
『もう一人で入れるでしょ?』
「たまには良いじゃない」
と上目遣いで仔猫のように寄り添う。チヅルは何か言いた気だったがそれより先にトシが口を挟む。
「じゃあ僕も!」
「トシは男の子だから駄目!」
「はあ?なんっ…!?」
これ以上は今朝の様に喧嘩になると判断しトシの口を手で塞ぐ。
「ふがっ!?何すんだよイタチ兄!」
「トシ。お前はこっちだ」
「え………」
『じゃあ決まりだね!皆で秘湯行こっか』
助かったと言わんばかりにチヅルはマツのお願いを提案に上乗せした。
※※※
「なっ…ななな、何でお前が此処に…!」
のんびりゆっくり、明日は用事無いからチヅに修行付けてもらおうと考えながらお土産は何が良いかとか一人で秘湯に浸かりながら思案してたら、やって来たのはトシを引き連れた二年ぶりに見るイタチと大柄な…怪獣みたいな男だった。
「誰ですか?この雑魚は」
「ミツ兄だよ!この村の村長さん!」
ちょっとトシくぅーん…雑魚って言葉にフォロー欲しいかなぁ…って思っても口には出さず雑魚呼ばわりしてくれた怪獣を睨み付けてみる。
「ニーチャンは見かけない顔だな。アンタも暁か?」
そう問うと包帯でぐるぐるに巻かれた大刀に手をかけるがイタチが無言で制すると力を抜く。つーか温泉場までそんな物騒なもん持って来てんじゃねぇよ。
「安心してくれよ。別に俺達村の人間は暁がどんな人間かは知らねぇ…し、どんな人間でも別にどうでもいい」
「………」
「チヅのお客…否、仲間?なんなら歓迎しない理由もねぇし」
「なーんかミツ兄難しい事言ってる」
「んなっ!?俺だって大人なんだからな!」
「ミツ兄、大人だったんだー」
茶化す様に湯船に浮かぶトシを捕まえてヘッドロックをかます…がするりと抜けられてしまう。むむむ、またほんの二三日見ないだけで腕をあげやがったか。
「あれ?そーいやぁ男連中だけ?」
ふと疑問に思った事を聞いてみる。