第3章 いつもは元気な彼が…
今週、最後の授業が終わって職員室へ向かい、自分のデスクへ向かう。
パソコンを開いて、来週授業で使う資料を作成しようとファイルを開くと、スマホのバイブが鳴った。
画面を見ると、彼氏の光太郎くんからで、教室を出てスマホを耳に近付けると、いつもは元気な彼の掠れた弱々しい、気だるげな声が聞こえてきた。
どうやら風邪を拗らせてしまい、一人では何も出来ないとわたしに看病のお願いだったようだ。
わたしは、職員室に戻ってコートと鞄を掴んで、スーパーへ向かった。
栄養ドリンクやスポーツドリンク、果肉入りゼリー、生姜、手早く作れるレトルトのお粥、冷蔵の鍋焼きうどん、とにかく風邪に効きそうなものをかごへ突っ込んでレジに向かう。
先週のお泊まりの時に、彼から教えてもらった住所がこんなにも役に立つなんて、運が良かった。
彼の住むアパートへ着いて呼び鈴を押すが、返事がない。
わたしは、もしかしてと思いドアノブを回した。
やはり、鍵はかかっておらず中に入ると、廊下に点々と衣類が落ちていて…靴を脱ぎそれを辿りながら進むと、寝室に彼の姿があった。
「こ、光太郎くん…!大丈夫…?」
「ー…めっちゃ、だるい…しんどい…」
慌ててベッドに近寄って彼に話しかけると、そこにはいつもの元気な彼は居なくて、下ろした髪の覗いた額から汗を浮かべながら酷い咳を繰り返す。
だいぶ、熱があるようだ。
わたしは買い物袋の中から、冷えピタを取り出して一枚彼の額に貼ってあげる。
「あー、冷えピタ気持ちいー…」
「光太郎くん、病院は?お薬とか貰ってきた?」
「ん、昨日行ってきた…薬も、そこにある…リビングのテーブルの、上…」
「うん、分かった、後もういっこ…お腹空いてる?」
「…減った…食いたい…」
「じゃあ、鍋焼きうどん作るから眠ってて…出来たら起こすから…」
頷いた彼を見て、わたしはコートを脱いだ。
あまり使われてないキレイなキッチンを借りて、鍋焼きうどんをコンロに置いて火をつけ、生姜を刻む。
温まったうどんをおぼんに乗せて彼の元まで運んで、寝ていた彼を起こした。
「熱いから火傷しないように冷まして食べてね?その間に洗濯物とか片付けておくから」
「わりぃ…いただきまーす…」
体を起こしてフーフーしながら食べ始めた彼を確認し、行動を起こす。