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紅茶とひまわりのクランケ【銀英伝】

第4章 彼は旧知の友


カフェを訪ねた翌朝、ミアは目の下にくまをつけて出社した。
正直言って、昨晩はよく眠れなかった。トリューニヒトに対する恐怖と、昨日出会った青年の顔が交互に現れては、彼女の脳を決して休ませない。彼女は、水を飲んで、アイマスクを付けて、最近同僚に貰ったアロマを焚いた。それでも眠気はやって来なかった。

今日から本格的にこの件の準備を進めなくてはならない。ミアは休息を求める自分の体に鞭を打ち、六法全書片手に膨大な資料と格闘した。

しばらくしたあと、蜂蜜色の髪をした小柄な男が彼女を訪ねた。
「ロッダ先生」
「…ミッターマイヤー先生!」
ヴォルフガング・ミッターマイヤーはロイエンタールと同じくローエングラムのパートナー弁護士で、その業績はロイエンタールと比肩する。愛妻家として知られ、正義感に富み、頼り甲斐がある。ミアはロイエンタールの直属なのであまり仕事を同じくすることはないが、ロイエンタールとは良きライバルであり良き友であるから、打ち上げなどが合同でおこなわれることが多々ある。
「相変わらず業務成績はミュラーとともに良好だな。ロイエンタールのヤツめ、良い部下を独占しやがって」
ミッターマイヤーはにやりと笑い、ミアを和ませた。
「今日はどうされたんですか?」
「ああ、いや、ちょっと小耳に挟んだ件なんだがな」
ミッターマイヤーは一転して真面目な顔つきになり、話し始めた。
「この件、どうやらちょっとばかり複雑らしい。ただの患者対病院の医療過誤訴訟ではなく、ネグロポンティ含む副院長3人の覇権争いも絡んでいる。それに、この執刀医が病院側に不服申し立てをしていて、そっちもどうにかしないとならん。
その執刀医だが、卿の出身高校の同期でな、まさかと思うが知り合いじゃないだろうな」
ミアは資料をペラペラとめくった。

「ダスティ、アッテン……アッテンボロー!?」
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