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紅茶とひまわりのクランケ【銀英伝】

第4章 彼は旧知の友


彼女は目を疑った。その資料には紛れもなく、顔写真付きで彼女の高校時代の同級生の名前が記載されていた。

そばかすで、含蓄のある笑みを浮かべながら教師や上級生に皮肉を放つ。なにより冒険心はいつまでも忘れない。校則を破る時にいくらミアが咎めたとて、「それがどうした!」と言って開き直っていた。
自由奔放で、かつ頭の切れた彼に、ミアはかつて淡く憧れの情を抱いたこともあったが、とりわけ特別な関係に発展したわけでもなく、ましてや今でも彼を忘れずにいるなんてことはない。実際、彼女がアッテンボローの名を聞いたのは、高校卒業以来のことだった。

「アッテンボローが…どうして?」
「はぁ…。厄介なことになってしまったな」
ミッターマイヤーは狼狽するミアを見て頭を抱えた。
「依頼人の利益を第一に考える、企業法務弁護士の鉄則だ。今回の依頼人つまりクライアントは附属病院の法人そのものだ」
ミアは黙ってミッターマイヤーの方を向いて聞いていた。
「ボスやロイエンタールなら、どうしろと言うと思うか?」
「…トリューニヒトの肩をもて、と仰るのでしょうね」
「やはり卿はローエングラムに来て浅いだけあるな。
ボスは無条件にクライアントを守らない」
それは弁護士としてはあるまじき姿だ、とミアは率直に思った。だが、アッテンボローの無実が証明できれば、彼女はアッテンボローを助けられる可能性を帯びているということをミッターマイヤーは示唆してくれたのだ。
「卿は卿自身の良心に従え。誰も咎めはせん」
ミアはそんな上司の言葉に、ローエングラム移籍が間違っていなかったことを改めて確認した。

彼女はミッターマイヤーと別れたのち、ミュラーと入念な打ち合わせを行い、事件の概要を全て頭の中に叩き込んだ。まず、事情がどうであれ医療過誤訴訟から病院の組織自体を守るのが先決だ。
明日は、トリューニヒト・アッテンボロー双方との面会だ。この時に、アッテンボローと昔話に花を咲かせると同時に、不服申立てについて詳しく事情を聞き出すことにした。
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