第3章 ハニー・ナースコール②
「じゃぁ最初からね。」
「はい…。」
まず、夢野の瞳をまっすぐ見つめる。
「夢野さん…その…好きなんです…貴方のこと…。」
「うん。それで?」
「き、キスしても…いいですか…。」
「ダメって言ったら?」
「えっ…。」
急な拒否に、胸がギュッとなる。しかし、拒否されても押し通すのが大切だと思い出し、夢野にキスをした。それは触れるだけのキスで、唇を離した後、これでいいかと問うように夢野を見つめる。
しかし、彼は首を横に振った。
「君はいつも恥ずかしがりすぎだね。もっと手早く積極的にこなしていかないと、逃げられちゃうよ。」
「は、はい…。」
彼女は、勇気を振り絞った誘いにもダメだしを食らい、少し泣きそうになる。そんな彼女の頬を優しい手が包んだ。
「君ならできるさ。仕事だと思ってもいいし、相手がすごく好きな男だと思ってもいいから、恥じらいを捨てて、頑張ってみて。」
夢野の言葉に、七七七は思わず言葉を詰まらせる。彼が提案した相反する自己暗示は、どちらも彼女にとって真実だったから。
「じゃぁ、最初から。」
両方を選ぶことができないなら、どちらかを選ぶしかなく、彼女は仕事だと思うことにした。
(これは仕事……これは仕事…。相手は悪いやつ…。)
相手は悪いことをしたやつだと思うと、なんだかしっくりくるような感覚を覚えた。
(そうよ……。こんな人…!めちゃくちゃにしてやるんだから…!)