第3章 ハニー・ナースコール②
「残念だったね。」
「全くです。報太郎さんに文句言わないと。」
七七七はシーツで身体を隠しながら、夢野の横に落ちてあるバスローブを拾おうとした。
だが、それは夢野によって制止されてしまった。
「………なんですか。」
「変身魔法、解こうと思ってね。」
彼がそう言うと、彼女の魔法が解けていき、元の姿へと戻った。しかし、腕は解かれないまま。そもそも魔法の解除をするのに腕を掴む必要なんてない。
彼女は嫌な予感がした。
夢野はベッドに腰掛け、こんなことを言い始めた。
「さっきの、全部見てたよ。なんだい、あの誘い方は。」
「あ、貴方に教わった通りにやりました…。」
彼女は、実はこの仕事を始める前に、男を誘惑する術を夢野からある程度教えてもらっていた。
「相手が童貞だったから良かったけど、普通の男なら断られてたかもしれないよ。」
「上手くいったからいいじゃないですか…。」
「ダメだ。もし失敗したら、迷惑するのは僕だからね。だから…練習しよう。」
掴まれていた腕がグイッと引っ張られる。もしかしなくても、彼は七七七に、誘惑の仕方を身体を使って指導するつもりらしい。
「まずは誘う所からしてくれるかい。」
七七七は戸惑う。正直、抵抗したい。
「きょ、今日じゃなくてもいいんじゃないですか…。」
「断るなら減給にするよ?」
「そんなっ…!」
「当たり前だよね。俺にとって、君の誘惑が上手くいくかいかないかは、大事な業務内容なんだから。」
業務内容といわれて、胸が締めつけられる。
「わかりました…。減給は嫌ですからね…。」
そんな感情を誤魔化すように嘘をついた。