第2章 ハニー・ナースコール①
業務をこなしつつ、それとなく所在を確認しておく。
そして、夜も更けた頃、高杉がいないことに気づいた。休憩時間はまだだし、トイレにしてはいない時間が少し長い。
見回りに行くふりをして、探しに行くことにした。
すると彼はリネン室にいた。
「高杉さん?」
声をかけると、高杉はリネン室で棚の上の方にあるシーツをとるのに苦労しているようだった。ぎりぎり手は届くが、パンパンに詰められていて引き出せないみたいだ。
「ん?あぁ、すいません。何かありましたか?」
「あっいいえ。偶然明かりがついてるのを見つけたので。」
「そうなんですか。実はシーツが汚れたベッドがあって、交換しようと思ったんですけど、シーツがなかなか取れなくて。」
(シーツが汚れた…まさか?)
七七七はついに尻尾を掴めたかもしれないと思ったが、まだ正体を明かす訳にはいかない。
「手伝います。」
2人がかりでシーツをひっぱるとパンパンにつまっていたシーツはやっと取り出せた。
「ふ~。ありがとうございます。」
爽やかな笑顔でお礼を言われ、七七七は思わず力が抜けて笑顔になる。
「いえ。これくらいなんでもないですよ。」
高杉はそんな七七七の笑顔を見て、少し顔を赤らめ、頬をポリポリとかく。
「…麻倉さんはいつも優しいし、優秀で…その…」
「やだ。そんなことないですよ。」
七七七は、警戒しなきゃいけないと思いつつも、腹黒探偵の夢野とは違う、裏表のない様な褒め言葉に照れてしまう。
しかし、そんなほがらかな雰囲気の2人の頭上では、パンパンな状態から無理に引き抜いてしまったせいで、今にも崩れ落ちそうなシーツの束が迫っていた。
「あっ…!」
それにいち早く気づいたのは七七七だっだが、狭いリネン室に逃げ場などほぼない。
「あぶないっ…!」