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【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第2章 エピローグ


カザフナショナル最終日のEXでリンクを滑走するオタベックの左手首は、時折ブレスレットのプラチナやストーン部分が、会場の照明等に反射して輝きを放っていた。
「別に、無理に着けようとしなくても」とスケートの妨げになるのを危惧する守道に、「練習の時に確かめたから大丈夫だ。これで、貴方とリンクでも一緒の気持ちになれる」と、オタベックは口元を綻ばせた。
スローな洋楽のナンバーに合わせて滑るオタベックの洗練されたスケーティングと穏やかな表情に、観客の誰もが魅了される一方で、「あのブレスレットは?」「贈り主は誰?」との疑問も出始めたが、「ナショナルの優勝祝いに、家族から貰いました」という表面上は平静そのものなオタベックの返しに、またしてもかわされていた。
実際は、「家族『同然の大事な人』から『プロポーズと一緒に』貰いました」なのだが。

「本当に君は、咄嗟の交わし方が上手いよな。いつかの撮影会でも、隠し通してたし」
さほど親しくなかった頃、偶々振付作りでピーテルに訪れていたオタベックは、当時はロシアに留学していた守道の誘いでフィルムカメラの撮影会に参加したのだが、その際も「スケート選手に良く似てると言われる」の姿勢を貫いていたのだ。
「結局あれから、君が自分の公式HPに撮影会で撮った写真をUPしたもんだから、後で俺が責められたんだぞ?『やっぱり本人だったんじゃないか!』って」
「それはすまなかった。でも、あの時は本当に楽しかったな。貴方もちゃんと口裏を合わせてくれたし、それに…貴方との色んな事が始まった日でもあったから」
守道の耳元で声を潜めながら囁いてきたオタベックに、守道は何かを誤魔化すように咳払いをする。
「守道、俺も貴方に何か贈り物がしたい。欲しい物はないか?」
「俺はもう、充分過ぎるほど君という宝物を貰ってるよ」
「でも、それは少し寂しい。俺だって、貴方に形になるものを上げたいんだ」
なおも言い寄ってきたオタベックの眼差しに、守道は柄にもなく赤面したが、
「そうだな…じゃあ、俺も君からお守りを貰うとするか」
「どんな?」
「俺のバイクに貼れるものがいいな。ひと目で君からの贈り物だと判るような」
君に出来る?と言わんばかりの恋人の少々意地悪な表情に、オタベックは不敵に笑ってみせた。
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