• テキストサイズ

【YOI男主】騎馬の民へ捧ぐ幸運【男主×オタベック】

第1章 騎馬の民へ捧ぐ幸運


「何でこんな事になったの」
ガレージの中、守道は覚えのない傷がついた己のバイクと、その傍で項垂れているオタベックを交互に見比べた。

ピーテルでの留学期間を終え日本の大学を卒業した守道は、現在建築を勉強し直す為にアルマトイの大学に通っている。
留学にあたっては、外交官の父親や彼の親友である在ロシアカザフ大使に世話になったが、実はその裏でオタベックも少しだけ噛んでおり、更に程なくして父親の赴任先がロシアからカザフに移ったのもあって、時折家族ぐるみの付き合いもするようになった。
はじめの出会いこそ悪印象だったが、共通の趣味から少しずつ距離を縮めていった2人は、やがて互いの複雑な事情や過去にも触れ、今では恋人同士として不器用ながらも愛を育んでいる。
そんな2人の共通の趣味の1つであるバイクは、オフには互いのバイクを貸し借りしたり、一緒に国内外のツーリングを楽しんでいたが、流石にシーズンが始まると、怪我等を懸念する守道から「シーズン中は、バイクの運転を控えるように。どうしても乗りたい時は、俺とのタンデムでハンドルを握るのは片道だけ」と言われていた。
守道の心配は判らなくもないが、長年バイクに乗り続け、運転にもそれなりに自信のあるオタベックにとっては少々煩わしくもあり、遠征の合間のとある休日「少し位なら良いだろう」と、自宅のガレージに一緒に停めていた守道のバイクを運転していたオタベックは、帰宅直前の何でも無い所で転倒してしまった。
いわゆる停車寸前の「立ちゴケ」で、オタベック自身に怪我はなかったが、横倒しになった守道のバイクは、エンジンガードその他に守られ致命傷は免れたものの、複数の傷が刻まれていた。
おまけにそのバイクは、守道がわざわざ日本の実家から持ってきたもので、彼が大切にしていた事を知るオタベックは、慌ててバイクを引き起こすと、守道に連絡をしたのである。

「君もバイク乗りなら、少しの気の緩みが車以上に洒落にならない事故に繋がるのは知ってるだろ?そうなったら君だけでなく、君の家族だって哀しむんだぞ」
「済まない。本当に…」
大きくはないが、いつもより硬質な守道の声に、オタベックはただ俯く事しか出来ない。
/ 14ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp