【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第7章 山猫の住処
「アッシュ?」
思わず名前を呼んだ。
アッシュの目に光が戻ったと同時に、スキップの足音がして部屋の扉が開く。
「ふたりとも、朝メシ買ってきたよ!ってごめん、もしかしてお取り込み中だった?」
「おかえりスキップ。ううん、そんなことないよ」
“お取り込み中”の意味がいまいちよく分からないままそう答えると、アッシュも何事も無かったかのように窓際の椅子に戻って行った。
スキップがハンバーガーを手渡してくれる。
そう言えば、この一週間まともな食事をとっていない。
やっと落ち着ける場所に来て、途端にお腹が空いてきた。
包み紙をカサカサ言わせながら中身を取り出すと、アッシュが眉をしかめた。
「げ、朝からバーガーかよ」
「なに、もしかしてアッシュってハンバーガー嫌いなの?」
スキップがアッシュにもハンバーガーを手渡しながら聞いた。
「だって添加物まみれだろ、そんなに美味くもねえし」
不満げに片手でハンバーガーを投げるアッシュに、スキップがムッとしてそれを取り上げた。
「ごめんなさい、私がハンバーガー好きだから・・・」
だからスキップは買ってきてくれたのかも、と思って申し訳なくなる。
「文句言うなら食べなくていーぜっ!」
「返せよ、腹減ってるんだ。食うよ」
スキップに取り上げられたハンバーガーを、アッシュが難なく取り戻した。
・・・さっきの冷たい瞳は見間違いだったのかな・・・
今は穏やかなアッシュがそこにいて、ハンバーガーをちょっと睨んでから口に押し込んだ。
スキップはムッとしたままポテトをかじっている。
「ふふっ」
何だかその様子が可笑しくなって声に出して笑う。
聞こえてしまったのか、ふたりが同時にこちらを見た。