• テキストサイズ

【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】

第7章 山猫の住処






アッシュに連れられてやって来たのは、とあるビルの一室だった。

「ここは?」

スキップがあちこち見回しながらアッシュに尋ねた。

「俺がたまに寝泊まりしてるところだ」

ベッドと破れかけのソファ、そして壊れかけのテーブルと椅子が全て一つずつのワンルームだった。

「とりあえずここで休めばいい。狭いけどあっちにシャワールームもある」

私はアッシュに促されるままベッドに腰掛けた。

「俺、なんか食うもの買ってくる!」

部屋から出て行こうとするスキップを、アッシュが片手で止めた。

「スキップ、この辺りは物騒だ。気をつけろよ」

「大丈夫!ここらはよく知ってるんだ!」

ウインクをして、スキップは元気に外へ出て行った。

「あいつ、スラム育ちなのか?」

アッシュは窓際の椅子に腰掛けながら言った。

「うん、この辺りには詳しいって言ってた気がするよ」

「そうか」

スキップが出て行ってしまったせいか、室内はビルの外の騒音だけになった。
私は何から話せばいいか分からなくて、膝の上で握った両手をただ見つめた。

手首の傷には包帯が巻いてある。
きっとあの医者が巻いてくれたんだ。
それなのに私は、突き飛ばしてしまった。
怖かった・・・大人の男の人が。


「スキップが帰ってくるまで寝てろよ。それとも俺が居ると気になるか?」

テーブルの上のパソコンを開きながらアッシュが言った。
いつの間にかメガネをかけている。

「ううん、そんなことない。そうじゃなくて、あの・・・」

うまく伝えられずにいると、アッシュはパソコンを叩く手を止めて顔を上げてこちらを見た。


/ 166ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp