【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第7章 山猫の住処
「やれやれ・・・コイツコイツって、相変わらず扱いが酷いなぁ・・・大の男を突き飛ばすだけの元気があるならその子は大丈夫だろう。また何かあったら連れて来ればいい。飲み薬と塗り薬を忘れずにな」
医者だという男の人は、言い終えるとうんざりした様子で奥の部屋に戻って行った。
「リサ、気分はどう?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
スキップがいくつかの飲み薬と水を持って来てくれる。
身体のあちこちがズキズキと痛んでいたけれど、スキップとアッシュの顔を見たせいか動悸は治まって、気持ちは落ち着いていた。
差し出された薬を一つずつ、水で流し込むようにして飲み込んだ。
「アッシュがリサを助けてくれたんだ。覚えてる?」
「うん、途切れ途切れにだけど・・・覚えてる。ありがとう、アッシュ」
アッシュはスマホの画面を確認しつつ、窓のブラインドの隙間から外の様子を伺っていた。
「動けるなら早くここから出た方がいい。この辺りの通りには監視カメラが多すぎる」
アッシュの言葉に、スキップが反応した。
「それって、リサを監禁してた奴がまたリサを捕まえに来るってこと?」
「その可能性は高い。こっちには証拠があるからな。リサが証言して奴の息がかかってないまともな刑事に訴えれば余裕でブタ箱行きだ」
「証拠なんてあるの?」
スキップがアッシュに尋ねた。
「あるさ。昨日奴がしゃべった内容を俺のスマホに録音してある。それから・・・」
言いかけてアッシュがやめた。
私を見て、肩に自分の上着をかけてくれる。
「その話は後だ。とりあえず場所を移そう」