【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第6章 Just want to
「リサに会ったのは去年の春頃だよ。うちは両親共にアル中で特に親父が酷くてさ。まともに飯も食べさせてくれない上に酔っ払うと殴るんだ。その日もめちゃくちゃ殴られて家追い出されて・・・ムシャクシャして、たまたま路地裏で目の前を歩いてたリサのバッグをひったくったんだ」
スキップが一瞬申し訳なさそうな顔をする。
「そしたらリサが追いかけてきて、俺の背中になんて言ったと思う?“そのバッグにお金は入ってないよ、だからちょっと待ってて”って。俺、もう呆気に取られすぎて振り返ったら、リサが俺の傷だらけの顔と身体を見て、“うちに来ない?”って言うんだぜ。信じられないだろ?こいつ絶対ドラッグで頭がイカれてるって思った」
確かに普通そんなことを言う奴はいない。
だけどリサならシラフで言っても不思議ではないと思いながら、俺は静かにスキップの話を聞いていた。
「でもそれでも金くれるならいいやって思ったんだ。どこにも行く宛無かったし、もし部屋の奥からヤバい奴が出てきたとしてももうどうでもいい気分になってた。だけど家に行ったら速攻で金くれてさ、不器用な手つきで消毒までしてくれた。丁寧なんだけどほんとに下手くそなんだ。しかも包帯巻きながらリサの腹の音鳴ってるし、思わず笑っちゃったよ。それで俺、渡された金でふたり分のハンバーガー買って戻った。だって、スーパーサイズのハンバーガーでも、200個は買えるような金額渡すんだもん!」