【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第6章 Just want to
「悪いな。この時間に開けてくれるのはあんたぐらいしか思いつかなかったんだ」
「まあ、いつものように瀕死のチンピラを置いてかれるよりはマシさ」
頼まれるとNOと言えない産婦人科医は、ため息をつきながら髭を撫でた。
「俺もここに居てもいい?」
スキップがメレディスを見上げた。
「ああ、構わないよ。この子も目が覚めて知らない場所に居たら驚くだろうからね、その方がいいだろう」
メレディスはそう言ってあくびを一つすると、奥の部屋へと消えて行った。
少しの沈黙が辺りを包んだ後、リサが横たわったベッドのそばの椅子にちょこんと腰掛けたスキップが言った。
「アッシュ、ありがとう。リサを助けてくれて。俺一人じゃきっとリサの居場所すらわかんなかった」
「いいさ。俺だって二人には助けてもらったんだ」
俺がそう言うと、スキップはやっと歯を見せて笑った。
「そうだった!そう言えば、アッシュを屋上からアパートまで運ぶのはすげぇ大変だったよ」
「だろうな。よく二人で運べたな」
「うん。リサが絶対助けるって聞かないから。今思えば俺のことも最初から平気で家に入れたし、つくづく危なっかしいことする奴だよね、リサって」
スキップが懐かしそうに目を細め、俺は随分と呼吸が楽になった様子のリサを見た。