【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第6章 Just want to
「・・・俺、あの時ハンバーガーを食べながら“美味しい!”って笑ったリサの顔忘れられない。ただのジャンクフードなのに、めちゃくちゃ嬉しそうにさ」
スキップがリサの身体に毛布を掛け直しながら言った。
「おまえにとってすげぇ大事なやつなんだな、リサは」
「うん。歳上だけど危なっかしくてほっとけない感じで・・・いつも何となく寂しそうにしてた。でも最近は火曜日になると楽しそうだった。アッシュのおかげだと思う」
「別に俺は何もしてねえよ」
「そう?リサは帰って来ても、習ったこと忘れないように一生懸命復習してたんだぜ。アッシュの貴重な時間を無駄にしたくないって、生き生きとしてた。俺は勉強なんかクソ喰らえだから理解は出来ないけど。よっぽど楽しかったんだと思う、アッシュの勉強会」
俺は図書館でのリサを思い出していた。
黙々とテキストに向かい合って、学ぶことが面白くて仕方ないようだった。
こんな目に合っているとは露ほども表に出さなかったリサ。
もしかしたら他の辛いことは全て、忘れてしまえる時間だったのかも知れない。
「これからどうしたらいいんだろ・・・」
つぶやいたスキップに俺は言った。
「それは明日考えよう。疲れただろ?今日はもう休めよ」
「うんそうする、ありがとアッシュ・・・」
言いながらうつらうつらと瞳を彷徨わせるスキップの肩に俺は毛布をかけた。