【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第6章 Just want to
「アッシュ・・・どうして・・・」
地下にしか行先の無いエレベーターの中で、リサが心なしか不安げに俺を見上げている。
「心配するな、すぐ医者に連れてってやる」
そう言うと最後まで聞こえたかどうか、リサは腕の中で眠るように目を閉じた。
地下駐車場は警報音が鳴り響いて頭が割れそうなほどだった。
すぐに非常口の階段から地上に出る。
遠くにパトカーのサイレンが聞こえていた。
急いでマンションのそばに停めていた車の助手席にリサを乗せ、シートをゆっくりと倒した。
シートベルトを締めたところで、ポケットの中のスマホが振動した。
見覚えの無い番号。
おそらくスキップだろう。
『もしもしアッシュ?』
「スキップか」
スマホをスピーカーにしてエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。
パトカーのサイレンと逆方向へ走り出す。
『うん。さっき知らない男が来たからアパートを出たんだ。アッシュはどこにいるの?』
「リサと一緒だ。10分後に今から言う住所に来れるか?」
『オーケー』
電話を切って助手席のリサを横目で見る。
相変わらず青白い顔をして眠っていた。
・・・これで本当によかったのだろうか。
そんな思いが頭をよぎったが、軽く頭を振って吹き飛ばした。
とりあえず、医者だ。
リサが回復してから、話はそれからだ。