【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第6章 Just want to
リサはどこか別の場所で、またあの変なパーカー姿で穏やかに過ごしているんじゃないかと思う自分が、今の今まで頭の片隅にいた。
そうであって欲しいという願望のせいだ。
どこまでを、“無事”だと言っていいのか。
ここに居て欲しかったけど、居て欲しくなかった。
そう思うほどにリサの姿は俺の胸をえぐった。
忘れかけていた。
人はたった一週間でここまでやつれるのだ。
ブラインドが閉じられ、外の月明かりも街の光も届かない薄暗い部屋の、異常に大きなベッドの上にリサは居た。
真っ白なベッドシーツの上に散らばった長い黒髪。
手首にはめられた手錠から連なる鎖はベッドの上部に固定され、腕に残るまだ新しい注射痕が痛々しい。
閉じられた瞳の上の長い睫毛が顔に暗い影を落とし、元々細身だった身体はさらに痩せて、青白い胸が弱々しく上下している。
なにより、何も着ていない素肌の上に付けられたいくつもの痣が、見ているこちらの胸を締め付けた。
・・・よくもこんなことを。
叫びたい気持ちを抑えて駆け寄ったが、起きる気配がない。
眠っているのではなく、気を失っている。
リサの脚の間から流れ出る白濁した体液を目の当たりにした時、体中の血が沸騰した。