【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第6章 Just want to
スキップが澄んだ瞳を伏せて俯いた。
素直で純粋で、嘘のない綺麗な瞳だ。
「いいさ。俺たちはお互いのことをよく知らないんだから仕方ない。それよりリサについて、本当に他に何も知ってることは無いのか?」
「うん・・・・・・・・・あっ、ひとつ思い出した!一度だけ、最初の頃リサがスマホをキッチンに忘れてシャワー浴びてた時に着信があったんだ。もちろん出たりはしなかったけど・・・画面に“R”って出てた。って、それだけなんだけど・・・」
「アルファベットの“R”か?」
「そう。リサがスマホを置きっぱなしにするなんて珍しいから覚えてる」
“R”・・・・・・何かの、いや誰かのイニシャルだろう。
俺たちよりもリサのことをよく知ったやつなんだろうか。
少なくとも、俺たちは知らないリサの連絡先を知ってるということだけは確かだ。
ポケットのスマホが振動して、フライからメールを受信したことを知らせていた。
「さすがに早いな」
そこにはアパートの契約者である男の名前と、そいつがどんな人間かが記してあった。
イニシャルは“R”では無かった。
・・・何度も逮捕歴があるな。
傷害、窃盗、売春の斡旋、人身売買・・・
その割に異例の早さで刑務所を出ている。
違和感を感じて、より詳しく調べていく。
パソコンさえあればもっと早く調べられるのに。
こんなことをしている間にリサに何かあったらと、いつになく焦りを感じていた。