【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第2章 Requiem
反射的に銃を取って飛び起き、扉から覗いた顔に向ける。
もう役に立たなくなった武器だと分かっているのに、染み付いた習慣というのは恐ろしいものだ。
「良かった、顔色は悪くないみたい。傷はかなり痛む?」
そう言って姿を見せたのは、一見すると13か14歳くらいの少女だった。
少しウェーブのかかった柔らかそうな長い黒髪に、琥珀色の瞳。
最初は顔だけを覗かせたが、こちらが起きていると知ってか部屋に入ってきた。
俺が構えている拳銃を一瞥して、わざとらしく洋服を持った両手を上げてみせる。
「心配しないで、私は敵じゃない。今あなたの服を乾かしてる途中だから、代わりの服を渡したいだけなの」
至近距離で銃口を向けられているのは自分だと言うのに、心配しないで、だなんてどうかしてる。
呆気に取られていると、全くひるむことなく持っていた洋服を差し出された。
その様子があまりに自然すぎて、思わず拳銃を持っていない方の手で受け取ってしまった。
「ここはどこだ?あんた一人か?あんたは誰だ?どうして俺はここにいる?」
矢継ぎ早に口にすると、琥珀色の大きな瞳がパチパチと瞬きをした。