【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第2章 Requiem
身体がふわふわとあたたかい。
柔らかな地面に横たわっている。
俺は死んだのか?
ぼんやりと瞼を開くと、見覚えのない白い天井と、明かりの灯っていない裸電球が自分を見下ろしていた。
電気をつけなくても明るいということは、まだ昼間か。
あの世にも昼や夜があるのだろうか。
そのまま視線をぐるりと巡らす。
脚の方向に扉が見える。
左手の方向には白い壁に同じ大きさの窓が二つ。
手足を伸ばせば身体がはみ出そうなくらい小さなベッドの上で、身体には肌触りの良い毛布がかけられていた。
枕元には、銃とスマホが並べて置いてある。
間違いなく、使い慣れた自分の物だった。
だんだんと頭が覚醒していく。
ここは、あの世なんかじゃない。
病院でもないし、もちろんアジトでもない。
ベッドと窓しかない、酷く殺風景な部屋だ。
だが心地良いあたたかさのせいだろうか、不思議と嫌な感じはしない。
起き上がろうとすると、あちこちに痛みが走った。
痛いということは、ここは夢の中でもないということだ。
廃ビルの屋上、雪の中で目をつぶったところまでの記憶はある。
あの後俺はどうなった?
そう考えた瞬間、なんの前触れもなく突然カチャリと扉が開いた。