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【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】

第5章 叶わなくても




それからの一週間、何度も手錠と鎖を外そうとしたけれど、ただひたすら手首が傷付いていくだけだった。

毎晩違う男の人がやって来て、永遠に思えるほど長い夜を過ごした。
出口の見えないトンネルを、明かりすら持たずに歩いている、そんな気持ちだった。



ーーー

もう17時は回っているだろう。

アッシュは図書館には行かないかも知れない。
でももし、アッシュが図書館に行っていたら。
そう考えるといてもたってもいられなくなる。

もう、一度だけ・・・
そう思って手錠から手首を抜こうとした時、突然背後から声がした。

「まだ諦めていないのか?お前がそんなに物わかりの悪い子だとは思わなかったよ。私はお前の見た目だけでなく、無駄な抵抗をしない賢いところも愛していたのに」

振り返ると、“R”がベッドのすぐ傍に立っていた。

「やはり外の世界など見せるべきでは無かったな。余計な知識や経験は反抗心を生み出す」

“R”は反射的にベッドの上で後ずさりする私に馬乗りになり、繋がれて自由の効かない腕を、片方の手で押さえつけた。

そしてもう片方の手に持っていた注射器を私の左腕に刺した。

「な・・・・・・・・・」

得体の知れない液体を流し込まれる。

「怖いか?お前を元の従順な子に戻すための薬だよ。多量に摂取すれば、その小さな頭の中の記憶も消えてしまうだろう。下手をしたら、自我すら消えるかも知らないけどね」

記憶?自我・・・?それは自分が自分でなくなるということだろうか。

「そん、な・・・・・・」

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