【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第5章 叶わなくても
立派な車の後部座席に乗せられて、何時間も走った。
隣に座った身なりの綺麗な男の人は、私の事は“Mr. Reed”と呼びなさい、と微笑みながら言った。
地下の駐車場からエレベーターに乗って連れて行かれた所は、まるでお姫様が住むような部屋だった。
「ここを君の好きに使っていい」
そう言われても、どうしていいか分からずにただ立ち尽くす私を抱き上げて、“Mr. Reed”は柔らかくて大きなベッドに降ろして去って行った。
その夜、広すぎるベッドの上に横になり、誰とも毛布を分かち合えない淋しさで私は泣いた。