【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第5章 叶わなくても
「ここよりずっと良いところだって。美味しいケーキや綺麗な洋服がいっぱいあるところ」
その子は愛らしいそばかすのある頬を染めて、嬉しそうに笑った。
銀色に近い透き通るようなプラチナブロンドに、ガラス玉のような青色の目をした、笑顔の可愛い優しい子だった。
それからしばらくして、とうとう私の名前が呼ばれた。
私はいつも一緒にいたその子を抱き締めて、お別れを言った。
部屋を出ると、いつもの男の人の隣に、とても身なりの綺麗な男の人が立っていた。
「1万ドルだなんてな。他のオファーを断り続けてきた甲斐があったぜ」
頭上で、きちんと角の揃えられた札束がひとつ受け渡された。