【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第4章 Hello, goodbye
そうしてまた火曜日がやってきた。
毎日夢見が悪いせいで俺は馬鹿みたいに規則正しく早起きをしていた。
今朝も新聞とネットニュースに一通り目を通す。
国内情勢、世界情勢、政治、株価、為替市場・・・
世の中は目まぐるしく変わっていく。
相変わらず世界のどこかで紛争は起き、誰かはそのおかげで金を儲け、誰かは家も家族も友達も失ったりする。
結局人間は、自分以外の誰かを傷つけずに生きていくことなんか出来ないんだろう。
「ようアッシュ!」
午後、白い息を吐きながらスタンドでコーヒーを買っていると、道の向こうからブンブンと手を振るモヒカン男が目に入った。
真っ赤なバイクにまたがり、緑とオレンジのジャケットを着て、そして紫色の髪。
そんなめちゃくちゃな色の取り合わせが妙に馴染んでしまう不思議な男だ。
「なんだショーター、おまえか」
あっという間に目の前までやってきた陽気な中国系アメリカ人は、俺の返事に不満気な声を出した。
「なんだってこたないだろ?相変わらずつれねぇなぁ」
「じゃあお目目キラキラさせてハグでもしろってのか?」
「いやいやいや、それ以上その目がキラキラしちゃったら、俺の目つぶれちゃうから」
「よく言うぜ。そのサングラスはお飾りかよ」
冗談をかますショーターをうんざりした目で見ると、サングラスの奥の目が怪しく光った。
「アレックスに聞いたぜ。今年に入ってから毎週火曜日はせっせと図書館に通ってるってな。ちょっとオベンキョーのしすぎじゃないの?」