【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第4章 Hello, goodbye
その日の真夜中。
俺は悪夢を見た。
自分の体を這い回る、無数の手。
引っかかれて噛みつかれて、押さえ付けられてねじ込まれる。
痛いとか苦しいとか、そんな感情はとうに通り越して、心の中に残ったのはどこか自分を他人事のように眺めるもう一人の自分だった。
奴らを拳銃で撃ち殺すと、あとはもう何も感じなかった。
悲しくも苦しくもない、からっぽの自分がそこにいた。
かつては生きて動いていた“モノ”を目の前にして、もう一人の自分が言う。
一瞬で殺して楽にさせてやるんじゃなく、生きて地獄を与えればよかったのに、と。