【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第4章 Hello, goodbye
「ありがとうアッシュ。きっと忙しかったんじゃ・・・?それなのに来てくれて申し訳ないよ」
リサが質問の答えじゃなく礼を言うのでどことなく気恥ずかしくなった。
こんな会話は、なんだか慣れない。
こんな普通の、当たり前の会話は。
「近くで用事があったから別に平気だ。本返さなきゃならなかったしな」
自分でもよく分からないまま、どうでもいい嘘をついた。
「そっか、それなら良かった。実はここがどうしても分からなかったの・・・この第4問なんだけど・・・」
いつものように俺の横にやってきて、残り数ページになったテキストをリサは指さした。
今日は真っ白なパーカーを着ている。
正面には何も書かれてないから、もしかしたら背中側にまた変な言葉でも書いてあるのかと予想して、リサの首元に目が止まった。
正面から見た時には気づかなかったが、髪の毛で見え隠れする、紫色の痣。
光の加減かと思ったがそうじゃない。
指を押し付けたような無数の痣が首にある。
「あんた、それ・・・」
思わず口にすると、リサがハッとして首元を片手で隠した。
「あ・・・・・・・・・」
明らかに狼狽えた様子に、言ってはいけなかったのだと気付いたが、もう遅かった。