【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第4章 Hello, goodbye
次の火曜日、図書館に着いたのは19時半を回ってからだった。
あの雪の夜に集団で奇襲してきた奴らはオーサーの手下で、武器の調達屋に手を回したのもやはりオーサーだということはすぐに調べはついていた。
それならばどうせまた襲ってくるからわざわざこちらから出向く必要も無い。
ただ、また単独の時に誰かが襲われては圧倒的に不利だ。
これまで以上にテリトリーの範囲外でも変わった様子が無いか皆が目を光らせていた。
アレックスが風邪をひいたせいで代わりに皆からの報告を受けていたら遅くなってしまった。
アイツが風邪をひくなんて見たことがない。
どうやら今年の冬の寒さは相当なものらしい。
図書館に足を踏み入れると、決して暑苦しくはない、心地良い暖かさが身を包んだ。
別に約束してる訳じゃない。
行かなくたって誰も咎めない。
だけど先週リサが最後に見せた表情がどうしても頭から離れなかった。
リサはいつものように机に向かってテキストを開いていて、俺は少なからず安堵した。
この一週間、もう図書館には来ないんじゃないかと、ふと頭をよぎる瞬間があったのだ。
「アッシュ、今日は来ないかと思った」
閉館間際に来た俺を、リサは驚きと嬉しさの入り混じった顔で見つめた。
「ちょっと用事があったんだ。もうすぐ閉館だから時間ないけど、何かあるか?」
俺が誰かに勉強を教えるなんて、ショーターが見たら腹を抱えて笑い転げるかも知れない。
最初は躊躇したものだが、質問と解説のやり取りも、4回目ともなるとすっかり慣れてしまった。