【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第4章 Hello, goodbye
半ば強引に勉強を教えると決まったものの、「毎週火曜日の午後3時頃から閉館まで、たいてい公立図書館にいるから、アッシュが来れる時だけで構わない」とリサは言った。
つまりそれは何の拘束力もない、この上なくアバウトなものだった。
俺だって毎日遊んでいる訳じゃない。
それに何より面倒なことはしたくないと言うのが本音だ。
別にすっぽかしてしまったって、良心が咎めるかすら怪しいほどの約束。
なのに火曜日の昼頃目覚めた俺は、散々行くかどうか迷った挙句、気付けば図書館へ向かっていた。
調べたいことや読みたいものがある、それに一応命の恩人だから・・・と、まるでそれを言い訳にするみたいに自分に言い聞かせた。
中に入ると、すぐに大きな机の端に座るリサを見つけた。
静かに向かいの席に座った俺に気づくと、少し驚いたようだった。
「びっくりした・・・来てくれるなんて思わなかった」
「あんたが来いって言ったんだろ?それに俺もここにはたまに来てるんだ」
まさか来るなんて1ミリも期待してなかったかのようなリサの表情に、拍子抜けした。
これでも来るかどうか悩んだってのに。