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【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】

第4章 Hello, goodbye



「・・・アッシュ・・・・・・、アッシュ?」

ぼんやりと見ていた相手が小声でこちらに話しかけているのに気づいてハッとした。

「なんだ?」

「大丈夫?気分でも悪い?」

「いや、ちょっと考え事をしてただけだ」

「あ、じゃあ後にするね、邪魔してごめんなさい」

リサが言いながらテキストの角を折った。

「いや、もう終わった。どうした?」

「いいの?」

自分が開いていた本を一旦閉じると、リサは音を立てないように立ち上がって、静かに傍にやってきた。
そのまま俺の椅子の横にしゃがみ込み、再び同じ目線になる。

ふわりと微かに漂う石鹸の香り。
甘くもしつこくもない、何の変哲もない香りだ。

「これなんだけど、なんで答えがこうなるのかどうしても分からなくて・・・」

小声で差し出されたのは先週見せられた数学のテキストだった。
どうやら確率の問題について、何度やっても答えが合わないらしい。

テキストを受け取って数秒して言った。

「これはあんたの答えで合ってる。テキストの答えが間違ってるんだ」

リサはキツネにつままれたような顔をした。

「テキストが間違ってることなんてあるの?」

「結構あるぜ。二回計算したから間違いない」

リサは感心したように目を輝かせた。
瞬きをする度に光を捉えて、キラ、キラ、と金色になる。
綺麗だな、と思って、そう思った自分に驚いた。

何かを見て綺麗だと思ったのはいつぶりだろうか。

「アッシュはすごいね・・・!ありがとう」

礼を言ってリサは再び別の問題に没頭する。

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