【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第4章 Hello, goodbye
「傘までもらっていいのか?」
まだ外には強い雪が降っている。
玄関で傘を渡されたのでそう言うと、スキップがイタズラっぽい笑みを浮かべた。
「いやいや、むしろリサがジーンズを弁償しなきゃなんないと思うけど?」
「スキップ。あんまりしつこいと明日は丸一日私と勉強することになるんだからね・・・」
「げっ、それは勘弁!」
スキップが肩をすくめて苦笑いした。
「でもアッシュ、本当にごめんなさい。その傘で許してくれる・・・?」
相変わらずズレたことを言う。
凍死しかけたのを助けてもらっておいて今さら許すも何も無いだろう。
縫われたのも洗濯して乾燥機にかけられたのも予想外だったが、これは文字通りダメージを受けたデニムになった。
ただそれだけのことだと思うようにした。
「ああ・・・もう気にするなよ。それより勉強って?」
平日の昼間に家にいるんだから学校に行ってるようには見えないが、そんなことはどうでもよかった。
申し訳なさそうなリサの顔が少しだけいたたまれず、話題を変えたくて訊いたまでだった。
ところが、すぐにスキップがしめたとばかりにどこからかテキストを持ち出してきた。