【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第3章 美しい人
ーーーそれから三ヶ月が過ぎた。
11月になると街はクリスマスムード一色になり、そのまま年が明けるまで華やかな雰囲気が続いた。
さすがに年末年始に誰かに呼び出されることもなく、スキップは少し前から家に帰っていた。
西暦が変わる瞬間は廃ビルの屋上で、エンパイアステートが色とりどりに点滅するのを見て過ごした。
夕方目を覚まして明け方に眠る生活リズムは変わることはなく、火曜日には図書館にも通っていたけれど、あれからあの人を見かけることは一度も無かった。
1月に入りニューヨークには寒波が押し寄せ、寒いよりも痛さを感じる。
しばらくの間続いた晴天が崩れると、車の中で流れるラジオのニュースが伝えていた。
そんな日だった。
私は真夜中に廃ビルの屋上で空を見上げていた。
あまりの寒さにしばらくここへは来ていなかったのだが、雪の降る気配に誘われて凍りつきそうな階段を登ってきた。
さすがに滑り落ちそうな給水タンクの上には登らず、タンクを背もたれにして座る。
最初はほんの少し、ひらひらと落ちてきていた雪が、どんどんと強くなっていく。
このまま、何も考えずに埋もれてしまえたらいいのに。
いつものように歌を口ずさんでいた。
途中から寒さで唇を動かすのも億劫になり、ラララとハミングを繰り返した。