【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第3章 美しい人
「いや、本棚の向こう側から変な声が聞こえたから何かと思って」
笑う度に揺れるブロンドの髪。
メガネの向こうの透き通るようなグリーン・アイズ。
そのどちらもが、天井の明かりを反射して煌めいた。
少しだけイタズラっぽく笑う顔は、言葉を失うほどに美しい。
まるでその姿は、本の挿絵で見た天使のようだった。
綺麗・・・なんて綺麗な男の人なんだろう。
無遠慮と言われても仕方がないくらいに見とれた。
「多分前に読んだ人が戻すとこ間違えたんだと思う。その本、ホントはもう二段下にあるべきだから」
長い指が私の目の前の段を指差す。
あ、本当だ・・・確かに先週はここにあった気がする。
そう思った時には、その人はもう身を翻して去って行くところだった。