【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第10章 Shorter
昼前にビクビクしながら様子を見に来たボーンズとコングが、ドアを半分も開けないうちに「やべぇ!」という顔をして矢のように別室に走り去っていった。
・・・アイツら、何か勘違いしやがったな。
わざわざ説明するのもめんどくさいような気がして、俺はまたうとうとと微睡みの世界に戻る。
自分だけ起きてしまっても良かったのに、動いてリサを起こしてしまうのではないかと、気が咎めた。
気分はこれ以上ないくらいに穏やかだと言うのに、何故か嫌な思い出が頭をよぎる。
相手はディノや、マービンや、思い出したくもない奴らで・・・
散々性欲のはけ口として使われた後に、抱かれたまま眠られるのが、俺は心底嫌だった。
熟睡してくれるならまだいい。
俺はするりと奴らの汚らしい腕を抜け出す。
だが時にはどれだけ神経を張り詰めて抜け出しても、相手を起こしてしまうことがある。
そうなれば、また吐き気を催すような行為が始まる。
奴らはどれだけ凌辱の限りを尽くしても、満足することは無い。
こちらが身体も心もボロボロになろうとも。
何故なら奴らの中で俺は人間では無いからだ。
ペットが痛がって苦しむ姿を見て喜んでいるようなものなのだ。
いや・・・ペットですらない。
ただの、魂の宿らない、人の形をしたモノに過ぎない・・・
振り払えない負の思考に息苦しくなり、俺は無意識にリサに回していた腕に力を込めてしまっていたのかもしれない。
「うー、ん」
とちょっと間が抜けたような声と共に、リサが俺のスウェットを掴んでいた手を離した。