【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第9章 ふたつの心
「えーと、リサ?は、アッシュの妹・・・じゃ、ねえよな?あぁ、食いながら聞いてくれればいいから」
わたしに向き直ったアレックスがまた遠慮がちに口を開いた。
わたしはベッドに浅く腰掛けて、缶詰のスープを混ぜながら冷ましていた。
アレックスの言葉に、ぶんぶんと首を振って否定する。
「違います・・・!」
「だよなぁ。最初、ボスが生き別れの妹が命を狙われてるから護衛しろって言うから俺らずっと見張ってたんだぜ。カノジョなら正直にそう言ってくれればいいのになあ」
ボーンズが気の抜けたような声で言うので、慌てて否定した。
「彼女じゃないです・・・!」
「ええ?違うの!?じゃ何?」
「強いて言うなら、と・・・・・・・・・」
言いかけて言葉に詰まった。
“友達”だなんて勝手に言ったりしたら、図々しいだろうか・・・
「と?」
ボーンズとコングは、わたしの返事の続きを待っている。
「と・・・・・・・・・」
まごついているわたしにアレックスが助け舟を出してくれた。
「アッシュの奴、ちゃんと説明せずに突然連れてくるからこっちもびっくりすんだよな。これもさっき聞いたんだけど、凍死寸前のアッシュを助けてくれたってのは本当だよな?恩に着るよ」
アレックスがどこまでの話を聞いたのかは知らないが、きっと察しのいい人なのだろう。
彼の一言でボーンズとコングが納得したように頷いた。
「なんだ、ボスの恩人!?まぁ妹にしちゃどっからどう見ても似てねーなぁとは思ってたんだよなー。なあ、コング」
「うん・・・でも俺らよりはボスに似てるような気がするけどなぁ」
コングのとんちんかんな発言に、ボーンズが絵に書いたようなしかめ面をした。
「はあ?比べる相手がおかしいだろ。誰に聞いたってそりゃおまえよりは明らかに似てるぜ」
「そうだよなぁ」
人の良さそうな顔でコングは笑った。
当の本人であるわたしを置き去りにしたままの不毛な会話を遮るかのように、アレックスが再び割って入る。
「俺らはたぶんこんな感じでこれからもちょいちょいここに出入りするけどよろしく。なんか困ったことあったらボーンズにでも言ってくれ」