【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第9章 ふたつの心
アッシュ、どうして私のサイズが分かったんだろうと不思議に思った。
でもさっきもパッと見て男の子と間違われたくらいだから、だいたいの検討くらいつくものなのかな。
いや、そんなことよりもわざわざ女物の下着を買わせてしまったのだとしたら申し訳なさすぎて・・・。
もしかして毎日アッシュの小さめなサイズの服を借りて着続けていたことを、ずっと気にしてくれていたのだろうか。
色んな考えがぐるぐると頭の中を回る。
まだ衣類にはタグがついたままで、切ろうと思って部屋を見回すと、ベッドサイドの机の上に小さなナイフを見つけた。
「借りていいかな・・・?」
誰にともなく呟いて、鞘から取り出してプチプチとタグを切っていく。
何のためのナイフか分からないけれど切れ味がとてもよくて、力を入れずともプラスチックの紐も普通の糸もすんなりと切れた。
そうしながら、パーカーに印刷されている漢字は一体どんな意味だろうかと思っていると、途切れ途切れにアレックスの苛立った声が聞こえてきた。
「どういうつもりだ?アッシュ。ここに女を連れ込むなんて」
自分のことを言われているのだと、心臓がどくんと鳴った。
続くアッシュの声は、アレックスとは対照的にとても冷静だった。
「連れ込むとかそんなんじゃねぇよ。別にリサは俺の女じゃない」
「じゃあ何だって言うんだ?トラブルの元になりかねないぜ!?お前らしくねえよ」
「・・・・・・・・・」
ドキン、と心臓が鳴る。
そして、倉庫でアッシュが言っていた言葉を思い出す。
“何十人もいる中に、女はいない・・・一人もだ。だからおまえをよく思わない奴もいるかも知れない”
アッシュは優しい。
私が“離れないで”なんて言って泣いたものだから、見捨てられずに連れてきてくれたに違いない。
きっと、こうやって責められることだって、分かっていたはずなのに・・・