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【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】

第8章 Lullaby









しばらくして泣き止んだリサは、俺の腕の中で、ぽつぽつと自分の話をした。

親の記憶はほとんど無いこと。

物心つくかつかないかの頃に売られて、同じような子供達と一緒に暮らしていたこと。
子供達は次々と引き取られて、自分は“R”に買われたこと。

“R”の他にも、マンションやホテルに呼ばれて知らない男の相手をすることもあったけど、一人だけ何もしてこず、ただ世の中のことを教えてくれたり、勉強を教えてくれる男がいたこと。
その男は、リサがアパートで暮らすようになった頃から会いに来なくなったこと。

スキップのことは、俺がスキップから聞いた話とはニュアンスがちょっと違っていて、怪我をしていたから手当をしようと連れて帰ったのに、やり方があまりに酷くて逆に手当の方法を教えてもらったと言っていた。
それからはスキップに説教をされないように、ネットで見て色々勉強したのだと言う。
・・・だから打ち身をした時も、あれこれ言ってきたのかと合点が行った。

他にも、たまに買い物をしに行っていた洋服屋のこと、怪我した小鳥を拾ってきてスキップと育てたこと、図書館で読んだ本の話・・・たわいも無いことを俺に聞かせた。
知り合ってから1ヶ月以上が経っているのに、知らないことばかりだった。


そうして落ち着いた様子のリサを腕の中から解放すると、恥ずかしそうに紅くなって、それを誤魔化すかのようにまた口を開いた。

「窓の外、暗くなってきたね」

「ああ、でも完全に暗くなるまでは出ない方がいい。夜になったら闇に紛れてアジトまで行く」

「アジト?」

「俺のもう一つの隠れ家みたいなもんだ」

「そっか・・・」


お互いの肩と肩が、まだ触れる距離だった。
何となく無理に離れるのも気まずいような、そんな空気が流れていて、俺は煙草でも持っていれば良かったと思った。


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