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【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】

第8章 Lullaby





「アレックス、俺の部屋にライフルで武装した奴らが押し入ってきた。・・・多分そうだ、一人見覚えのある奴がいたんだ。・・・ああ、無事だ。そっちも気を付けろよ。・・・あいにくすぐ動けない。明日アジトへ行く」

通話を終え、格子のはまった小さな窓から外の様子をうかがう。
誰も追って来てはいないようだった。


窓から離れると、やっと少しだけ気を緩めてリサの向かいの段ボールに座った。
スマホをポケットにしまった俺に、リサが遠慮がちに訊ねた。

「アッシュ、さっきの人達は誰・・・?」

当然の質問だった。
予想していなかったわけじゃない。
あと少しで死ぬところだったんだ、リサにそれを訊く権利はある。

「俺を殺したいと思ってる奴ら。ストリートギャング・・・つまりチンピラさ、俺と同じ」

俺はリサの顔をまともに見られなかった。
もっと早く、言っておくべきだった。
いや、もっと言うと、言う前にリサから離れるべきだった。
分かっているのに、俺の口は重たく、こんな話は出来ればしたくないと心が叫んでいた。

「アッシュはこんな風に、いつも命を狙われているの?」

「まあ・・・そうだな」

俺はため息をひとつついてから言う。

「けど住んでるとこにまで来たのは初めてだ。あんたまで巻き込むつもりはなかったんだ・・・悪かった」

俺のせいだ。
俺がもっと早くリサを安全なところへ連れて行っていれば良かったんだ。
またあの男に囚われるかも知れないなんて思っていたが、そんなことよりも俺の傍にいることの方がもっと危険だ。

リサは「ううん」と静かに首を横に振った。

「前にスキップに聞いたの・・・アッシュは“アッシュ・リンクス”なの?」

「・・・そうだ」

「ストリートギャングの、ボスなの・・・?」


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