【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第8章 Lullaby
部屋はフロアの一番奥だ。
視界に、扉に向かってライフルを構える男が見えた。
しまった・・・!
「リサ!!!伏せろ!!!!!」
そう叫びながら、ライフルを発砲した男のこめかみを狙って撃った。
その男の背後にいた二人がこちらを見た。
間髪入れず二人の眉間にも撃ち込む。
上半分が吹き飛んだ扉を蹴破ると、呆然としているリサが居た。
良かった、生きてる。
「アッシュ・・・」
恐る恐る立ち上がったリサは、廊下に倒れた三人の死体を見て目を見開いた。
「その人たち、死んで・・・」
リサが言いかけた瞬間、複数の人間が階段を駆け上がってくる音が聞こえた。
「リサ、走れるか」
「う、うん」
俺は立ちすくんでいたリサの手を掴んで廊下を走り出した。
他の部屋にいた人間が何事かと扉から出てくるのを避けながら階段を登る。
走り慣れないのかリサはハァハァと息を切らせていた。
屋上の冷たいドアに倒れ込むようにして屋外へ出ると、冬の太陽に思わず目を細めた。
階下で「どこへ行った!?」とザワついているのが聞こえる。
おそらくさっきの奴らの仲間だ。
上に登って来るのは時間の問題か・・・
あまり意味は無いだろうと思いながら外鍵をしめる。
ビルの端まで行き、フェンスに足をかけた。
「登れるか?」
そう聞くと、リサはこくんと頷いておぼつかない動きでフェンスを登り始めた。
俺は先にてっぺんまで登り、リサを引き上げる。
フェンスから降りるとそこはもう一歩でも踏み出せば空だった。
ものすごいビル風が吹き抜けて、気を抜けば落ちてしまいそうだ。
横にいるリサが、はるか下にある地面を見下ろして足を震わせた。