【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第8章 Lullaby
その日の午後。
ジーンズのポケットに入っていたスマホが振動する。
俺はリンクスのアジトでアレックスと喋っているところだった。
着信の相手にギクリとして通話ボタンを押す。
「どうした?」
『ボスぅ、今コインランドリーの近くなんだけど、さっきから変な男が中の様子を伺ってるぜ』
ボーンズの気の抜けたような声がスマホから聞こえてくる。
「どんな男だ?一人か?」
『一人。とにかく挙動不審でランドリーの前を行ったり来たりしてさぁ・・・中に入ろうか迷ってる感じ』
「オーサーのチームの奴か?」
『うーん。こっからじゃよく分かんねぇけど、武器持ってる風でもねぇし、そこまで危険な感じじゃなさそうだぜ』
「分かった。その男が変なことしないように見張ってろよ」
俺は通話を終えるとスマホをジーンズの尻ポケットに戻してジャケットを羽織る。
「アレックス、悪いがあとは頼む」
「了解」
アレックスは俺の急な行動にも動揺することなく頷いた。
アジトと寝泊まりしている部屋は走れば五分と少しの距離だ。
俺はオーサーのチームの奴に奇襲された一週間前から、ボーンズとコングにリサを見張らせていた。
奴らがリサを襲うとは思わないが、俺を殺るためなら手段を選ばないだろうから、攫うぐらいやるかも知れない。
部屋に向かいながら、またスマホが鳴った。
ボーンズだ。
『ボスぅ、怪しい男が見張り対象に話しかけたから捕獲したけどどうする?たぶんただのナンパだけど』
「そうか。対象はどうした?」
『すぐビルの中戻ってったぜ』
「分かった。念の為そいつの身元の確認だけしてお前らはアジトに戻れ」
ビルの階段を登りながら、異様な空気を感じ取った。
張り詰めた雰囲気と・・・・・・殺気。
まさか。
階段を、部屋まで駆け上がった。