【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第8章 Lullaby
銀行を出ると、紫のモヒカン男が俺を待ち構えていた。
相変わらずド派手な赤色のバイクに乗っている。
「よぉアッシュ!まるでどこかの大企業の御曹司みたいなカッコだな」
ショーターはスーツに革靴姿の俺を見てニヤリと笑った。
「ラフすぎる服で行くと銀行じゃ目立つだろ」
「なるほどね。銀行強盗と間違われても厄介だしな。ほらこれ、頼まれてたモノ買ってきたぜ!姉貴にも協力してもらったんだ」
バイクにまたがったまま大きな紙袋を、ほい、と差し出される。
「おまえ変装だけじゃ足らずに女装まで始めたのか?それにしちゃサイズが小さすぎると思うけど」
「悪いなショーター。助かったぜ。マーディアにもよろしく言っといてくれ」
女装のくだりは完全に無視して、紙袋と引き換えにリサから受け取って手元に残していた金をショーターに渡した。
ショーターは渡された金をポケットにしまいもせずにぽかんと口を開けた。
「“悪いな”!?“助かったぜ”!?・・・なんだおまえ、熱でもあんのか?」
「ねえよ。俺だってたまには感謝くらいする」
「ヘェ・・・おまえが素直だと逆に怖いな・・・」
面白そうに見てくるショーターを無視して俺は歩き出した。
「じゃあなショーター」
「えっ、もう行くのか!?」
「ああ。おまえに忠告された通り、最近オーサーのチームの奴らがやたらとちょっかい出してきて忙しいんだ」
「やっぱりそうか。アッシュ、余計なお世話かもだけどその紙袋の中身の主にもボディーガードを付けといた方がいいんじゃねえの?」
「ああ、もう付けてるさ。ボディーガードというよりはただの見張りだけどな」
俺は地下鉄の階段を降りながら、俺の背中を見送るショーターに手を挙げた。