【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第8章 Lullaby
「うん、コインランドリー以外の買い物とかはスキップにお願いしてるから大丈夫」
リサは俺の忠告通り、外を出歩くことは全くと言っていいほど無かった。
代わりにスキップが色々と力になってくれているみたいだ。
スキップともここのところほぼ毎日顔を合わせているが、この辺りのことも詳しい上に、ダウンタウンでも生きていく術をちゃんと身に付けているようで、かなり頼りになる。
「それならいいけど、話しかけられてもあんまり自分のことしゃべるなよ。それから万が一俺の事を聞かれても知らないって言えよ」
「アッシュのこと?うん、分かった」
そう言うとリサはちょっと首をかしげたが、すぐに頷いた。
朝食を食べ終わると俺はすぐに出かけた。
まずリサから預かった金を少しだけ手元に残して、あとは銀行に預けた。
リサは生活費のつもりで俺に渡したのかも知れないが、こんな大金一年あっても使い切れはしない。
もちろん足がつかない架空名義で口座を作成した。
本人の名前で作りたくても、リサは身分を証明するものを何も持っていないからだ。
フライに頼んでリサについて調べてもらうことも考えたが、苗字がわからない上にニューヨーク近郊で16年前に生まれたという情報だけでは突き止めようがないだろうと思った。