【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第8章 Lullaby
リサは無意識なのか、俺の腕を片手で冷やしながら、もう片方の手でぎゅ、と握っていた。
「そうか」
俺の相槌を聞いて自分でもそのことに気づいたようで、焦った様子で俺の顔を見た。
「・・・っあ、ごめん、ベタベタ触ったりして・・・。やっぱり嫌だよね。その、汚いとか・・・思うよね・・・」
細く白い両手から力が抜けていく。
「馬鹿、そんなわけないだろ。ほら、ちゃんと持ってなきゃどんどん下に落っこちてくぜ」
わざと左腕をひょいと机の下まで下げると、リサは慌てて両手で持ち上げた。
「わわ!ダメだよアッシュ!せっかく冷やしてるのに・・・!」
何回もそれを繰り返すと、その度必死に腕を追いかける姿が可笑しくなって思わず吹き出した。
リサもつられたのか困ったように笑う。
俺たちは、初めて顔を見合わせて笑った。
俺はリサを、すごく強いと思った。
俺なんかよりずっと強いと思った。