【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第8章 Lullaby
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シャワーを浴びて部屋に戻ると、具材が全部溶けて不思議な色になったシチューとリサの笑顔が俺を待ち受けていた。
視線をひしひしと感じながらひと口食べる。
「・・・・・・・・・」
昨日よりはましだ。
ただ、おそらくチーズを入れたんだろうが、それが素材の味を全て殺している。
隠し味のつもりで入れたであろうレモンだけが皿の底から出てきた。
こういう時は嘘でも美味いというべきなんだろうが・・・
不味いものは不味い。
一度スキップが作った昼飯を食べた時は美味いと思ったものだが、そのスキップに習って何でこうなるのかは理解できなかった。
・・・人間が味覚を感じるのは舌と鼻のおかげだ。
舌はどうしようもないが、鼻は何とかなる。
俺は可能な限り息をしないように一気に胃袋まで流し込んだ。
「・・・ごちそうさま」
食事の感想を求められないあたりは助かっている。
リサは相変わらず笑顔で空になった皿を下げた。
近くに寄られると長い黒髪からふわりとシャンプーの香りがする。
前は近づく度石鹸の香りがしていたけれど、今は自分と同じシャンプーの香りだ。
「アッシュ、左腕のとこ痣になってる」
食べ終わったそばからパソコンをし始めた俺にリサが言った。
キーボードを叩くのに邪魔で袖まくりをしたせいで、左腕の打ち身がバレてしまった。
今日の夕方、オーサーのチームの奴が三人ほど突然路地から飛び出してきた。
俺を突き飛ばしてひるんだところを撃ち殺すつもりだったんだろうが、咄嗟に避けたせいで壁に腕をぶつけた。
襲ってきた三人組は打ち身どころじゃない姿になったが、急所は外したから死んではいないはずだ。
「これくらい平気だ」
慣れているので気にも留めていなかったが、リサは違ったようだ。
「でも、打ち身でも甘く見たら痛みが長引くよ」
そう言うとリサはわざわざ氷を入れたビニール袋を持ってきて患部を冷やし始めた。