【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第8章 Lullaby
もしかしたらそもそもリサは、俺を男というカテゴリーに入れていないのかも知れない。
「ちょっと自信無くすぜ・・・」
すやすやと穏やかな寝息を間近に聞きながらソファに寝転がり、冗談交じりにつぶやいた。
・・・もし、俺が何人もの人間を傷付けてきた人殺しだと知ったら。
リサはどんな顔をするだろうか。
別に隠しているわけじゃない。
ただ近いうちにここを出て、まともな人間に囲まれて生きていくことになるリサに、わざわざ人殺しと一緒に暮らしたという記憶など必要無いと思っていた。
知られる前に、段取りを整えなければならない。
あまりもたついている時間は無い。
街の監視カメラが気になるせいか、最近はどこを歩いていても見張られているような気がする。
“R”がリサの口封じのために命を狙うとまでは思えないが、平気で人の人生を踏みにじるような奴だ。
こっちが証拠を握っている限り、我が身可愛さに何をするかなどわからない。
先手を打たなければ、この先もリサが安心して暮らしていくことは出来ないだろう。
それに問題はそれだけじゃなかった。
度々つけられている、と感じることがある。
振り返ると辺りに嫌な気が漂っている
・・・殺気だ。
ショーターに警告された通り、オーサーの手のものだろう。
「・・・ヤブ蚊が多くて困るな」
どいつもこいつも、何だってそんなに他人に執着するんだ。
俺にはそれが、ずっと昔から理解出来ない。