【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第2章 Requiem
「俺が言うのもなんだけど、危ないんじゃないのか?動物はともかく、人間の男を拾ってくるなんて」
俺の質問にスキップが答えるより早く、リサがキッチンに入ってきた。
石鹸の微かな香りがあたりに漂う。
「大丈夫だよ、私だってちゃんと相手を見てから連れて帰ってるもの」
拳銃を持った血まみれのやつを連れ帰るだなんて、あんたの目はどこについてるんだ?
と口に出しそうになったけれど飲み込んだ。
色々と疑問だらけだが、相手が命の恩人であることに間違いはないはずなのだ。
リサは俺の向かいの席に座って、スキップに渡されたキャベツたっぷりのホットドッグを食べ始めた。
そこで初めて真正面にある顔をまじまじと見た。
柔らかそうな黒い前髪の間から覗く形のいい眉。
肌の色は透き通りそうなほど白く、滑らかな陶器のようだった。
通った鼻筋も小さな口元も、それを縁取る輪郭も華奢で、そのせいで長いまつ毛の下にある琥珀色の瞳が余計に存在感を増している。
アジア系アメリカ人だろうか。
13歳かそこらで親と離れて一人暮らし?
街から少し離れているとは言え、この部屋なら家賃はひと月あたり1500ドルは下らないだろう。
親が余程の金持ちなのか。
たとえそうだとしても、何故一人で・・・