【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第7章 山猫の住処
それから少しして乾燥機が運転を停止し、完了を告げるアラームが鳴った。
扉を開けて洗濯物をカゴの中に入れていく。
今日はベッドシーツも全て洗ったから、かなりの量があった。
平日のこの時間帯はいつも人が少ない。
今日も私とスキップ以外には誰もいなかった。
だから、よいしょとカゴを持ち上げて振り返って初めて、目の前に男の人が立っているのに気付いて息が止まりそうになった。
ぶつかりそうになり、カゴを持ったままよろめいた。
「あっ、ご、ごめんなさ・・・」
反射的に謝りそうになって、思った。
こんなに他の洗濯機が空いているのに、どうして私の真後ろに・・・?
冬なのに何故だか汗が一筋、背中を伝った。
その人は背も身体も大きくて、大人の男の人だと思ったけれど、よく見るとまだ十代後半くらいだった。
「最近、このコインランドリーによくいるよな?」
鋭い目付きで私を睨んでいる。
「あ・・・あの・・・」
もしかしてスキップやアッシュが言っていたように、“R”がまだ私を探していて、この人はその手先なのでは・・・
スキップがいなくなったタイミングで近付いてくるなんて、ずっと見張られていた・・・?
一応アッシュの言い付け通り、外出時には帽子をかぶるようにして顔も髪も見えにくくしていたのに、何故。
背中をまた嫌な汗が流れた。
後ずさりする私に、その人はポケットから素早く何かを取り出し、私の目の前に振りかざした。
「!!!」
撃たれる・・・!?
持っていたカゴを床に落とした。
とっさに目をつむり、顔を両手で守った。