【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第7章 山猫の住処
それでも私はめげずに毎日何かを作り、アッシュは無言でそれを食べていた。
どんなに遅くなっても作ってあればちゃんと食べてくれるし、食べ終わったら必ず「サンキュ」と言うアッシュはやっぱり天使のようだと私は思った。
朝は食べずに出て行くことが多かったけれど、サラダがあれば好んで食べることが分かった。
スキップの言う通り、アッシュはヘルシー志向なんだと思う。
ドレッシング代わりの酢と塩とオリーブオイルを私が混ぜると微妙な顔をするので、調合は自分でやってもらうことにした。
相変わらず、夜明け前にアッシュはよくうなされた。
狭いソファで眠るせいかと思って一度無理矢理寝る場所を交換したけれど、やっぱりそれは変わらなかった。
あまりに苦しげにうなされるので起こした方がいいのだろうけど、また前のようになったらと思うと気軽に声をかけてはいけない気がしていた。
そして、うなされた日の朝のアッシュは、決まって寝起きが悪かった。
すっかり規則正しく起きられるようになった私は、頼まれた時間に起こそうと試みたけれど、なかなか上手くはいかなかった。
ついに諦めて、起きないなら心ゆくまで綺麗な寝顔を見つめようとしたら、私の気配が気になったのか不愉快そうに起きてくれた。
でもそれも三日目には慣れたようでまた起きなくなってしまった。
私はだんだん、今日はどうやって起こそうかと考えるのが楽しくなっていた。
顔の前でサラダに胡椒を振りかけてみた時だけは怒られたけれど。
アッシュの食生活には申し訳ないけど、こんな生活がずっと続けばいいのに・・・
ふとした瞬間にそんなことを考えるようになった。
その矢先のことだった。