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【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】

第7章 山猫の住処



「わ、私、シャワー浴びてくるね。シャワールーム借りてもいい?」

動揺しているのを誤魔化すように、缶詰のゴミを紙袋に入れながら立ち上がる。

「いいけどここのシャワー、出しっぱなしにすると水しか出なくなるから気をつけろよ」

アッシュはそう言って、タオルの場所やバスルームの使い方を案内してくれた。
小さなシャワーヘッドがひとつあるだけの、人ひとりでいっぱいになってしまうシャワールームだった。

アドバイス通り5分でシャワーを浴び終わって、貸してもらったシャツとスウェットの上下に体を通す。
上の服は袖を三回、下のズボンは裾を五回も折り返した。
ダボダボのそれは、アッシュがくれたマフラーと同じにおいがして何だかホッとした。

部屋に戻ると、アッシュはまだソファに座っていて、今度は分厚い本を読んでいた。
私の姿を一瞥して言う。

「・・・俺の服じゃ大きすぎるよな。これ、スキップがあんたのアパートから持ち出した荷物。服詰める余裕無くて、あの妙なパーカーのコレクションは持って来れなかったとか何とか言ってたぜ」

そう言って渡された大きなカバンには、私が普段飲んでいたピルや傷薬、いつも使っていた包帯、そして大量の札束が入っていた。

「スキップ・・・」

「何だよ、やっぱりパーカー最優先だった?」

アッシュまで私をからかい始めたようで、少しだけ咎めるようにアッシュを見る。

「冗談。あいつすげえ気が利くよな」

感心するアッシュに首を縦に振って同意した。
カバンから道具を取り出して手首を消毒し、包帯を巻き直す。

「あのアパート、もう帰れないと思うぜ。突然知らない男が鍵開けて入って来たってスキップが言ってたから」

アッシュがそう教えてくれた。

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