【BANANAFISH】Lullaby【アッシュ】
第7章 山猫の住処
「アッシュと言えばさ」
スキップが半分身を起こして言う。
「リサを探してる時、すごかったんだぜ。ほとんど手がかりもなかったのに、数時間もかからず見つけて、連れて帰ってきちゃうんだもんな」
たしかに。
私ですら正確な住所も知らないのに、どうやって見つけることが出来たんだろう。
しかも医者にまで連れて行ってくれて、今はここにかくまってくれている。
「ほんとだね・・・それにどうしてこんなに親切にしてくれるんだろ」
朦朧とした意識の中で、アッシュが“R”を撃ったのが分かった。
致命傷でないのはその後聞こえたやり取りから明らかだったけれど、そんなことをしたらアッシュが警察に追われることになるのに。
私なんかを助けるためにそこまでしなくて良いのに・・・
心と身体が落ち着いたせいか、だんだんと冷静に考えられるようになってくる。
私、もうあんな生活をしなくてもいいのかな。
嫌で嫌でたまらないことを耐えなくてもいいのかな。
「やっぱりリサが可愛いからじゃない?」
スキップがいたずらっぽい顔をしてこちらに歯を見せた。
「またスキップはそうやってからかう・・・」
責めるように見ると、スキップはごめんごめん、と笑ったあとに、急に真面目な顔をして言った。
「ねえ、リサは“リンクス”って知ってる?」
「Lynx?猫の仲間?」
「あ〜そう、意味はそうなんだけどさ。違うよ、この辺をまとめてるストリートギャングのチーム名がリンクスなんだ。で、そこのボスの名前が“アッシュ”っていうらしいんだ」
唐突な情報に、私の脳みそはついて行けない。
ストリートギャング?
リンクス?
ボス?
「アッシュ・・・って、あのアッシュ?」
「うーん、俺そのボスの顔知らないけど、めちゃくちゃ強くて頭の切れる奴だって聞いたよ」